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放置すると空き家の敷地の固定資産税が6倍に!維持にかかる税金と増税する原因を解説

2024.01.30

空き家でも固定資産税は課されます。空き家を放置し、管理不全空き家や特定空き家に指定されると、その敷地の固定資産税が敷地の面積により税額が現在の3倍あるいは6倍になるので注意が必要です。ここでは、固定資産税が上がる条件や、固定資産税で悩んだ場合の対処法について解説します。

空き家の固定資産税はいくら?

固定資産税とは、土地や家屋などの固定資産に課される税金のことです。居住者の有無に関係なく課されるため、空き家も納税対象です。

固定資産税は以下のように算出されます。
<固定資産税の計算式>
課税標準額(固定資産税評価額)×1.4%

課税標準額とは、住民税の計算の基礎となる金額のことです。決められた評価基準に基づき、各市町村(東京23区は都)が個別に決めています。

土地の時価の約70%が固定資産税評価額の目安と言われていますが、場所や周囲環境、家の規模などにも左右されます。

空き家には固定資産税のほかに都市計画税がかかる

都市計画区域内にある空き家の場合は、都市計画税もかかります。都市計画区域とは、都市として整備や開発、保全する必要があると指定された地域のこと。

都市計画税は、都市計画事業や土地区画整理事業などの費用に充てるため、その土地や家屋に課されます。

都市計画税は、以下のように算出されます。
<都市計画税の計算式>
課税標準額(固定資産税評価額)×上限0.3%|

税率は0.3%を上限に、各自治体が決定しています。おおよそ0.2%から0.3%が標準です。

空き家の「固定資産税等の住宅用地特例」とは

空き家には通常、「固定資産税等の住宅用地特例」が適用されています。ここでは、特例の内容や特例が適用されなくなる条件について解説します。

固定資産税を含む税金が軽減される

「固定資産税等の住宅用地特例」とは、住宅が建っている土地に対して、固定資産税や都市計画税が減額される制度です。住宅が建っていることが条件なので、空き家も対象です。

特例が適用されると、課税標準額が減額されます。具体的な計算式は以下の通りです。

・小規模住宅用地(戸建てや集合住宅の敷地で200平方メートル以内の部分)

税制度 特例の内容 特例適用時の計算式
固定資産税 課税標準額が1/6に減額 課税標準額×1/6×1.4%
都市計画税 課税標準額が1/3に減額 課税標準額×1/3×0.3%

・一般住宅用地(戸建てや集合住宅の敷地で200平方メートル超の部分)

税制度 特例の内容 特例適用時の計算式
固定資産税 課税標準額が1/3に減額 課税標準額×1/3×1.4%
都市計画税 課税標準額が2/3に減額 課税標準額×2/3×0.3%

 

解体すると当てはまらなくなる

「固定資産税等の住宅用地特例」は住宅が建っている場合のみ対象です。そのため、空き家を解体すると特例対象外になり、これまでより土地の固定資産税の総額が高くなります。

固定資産税は、建物と土地の両方に課税されるため、建物の固定資産税はなくなりますが、土地にかかる固定資産税がこれまでの6倍となるため、結果的に空き家があったときよりも金額が大幅に上回ることになります。

特定空き家も対象外となる

空き家が建っている状態でも、特定空き家に指定された場合は「固定資産税等の住宅用地特例」の対象外になります。

特定空き家とは、状態が著しく悪く、そのまま放置すれば近隣に悪影響を及ぼす可能性がある空き家のことです。2015年5月26日に施行された「空家等対策特別措置法」では、特定空き家の定義を以下のように示しています。

・倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
・著しく衛生上有害となるおそれのある状態
・適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

特定空き家に指定されると、その翌年から特例の対象外となるため、結果的に税金が6倍に跳ね上がります。尚、2023年から、特定空き家だけでなく管理不全空き家も特例対象外となりました。詳しくは次の章で説明します。

特定空き家と管理不全空き家

2023年、特定空き家の前段階となる「管理不全空き家」という分類が新たに制度化されました。管理不全空き家とは、放置すれば特定空家になるおそれがある空き家に指定されるものです。

管理不全空き家に指定され、改善が見られない場合は「固定資産税の住宅用地特例」が適用されなくなります。

特定空き家と管理不全空き家の違いは、行政代執行の可否にあります。行政代執行とは、行政が強制的に空き家の解体を行うことです。解体にかかる費用は、全て所有者に請求されます。管理不全空き家から特定空き家になるまでの流れは以下の通りです。

1.管理不全空き家に指定
2.自治体からの指導
3.改善されない場合は勧告を行い、 固定資産税の住宅用地特例を解除
4.特定空き家に指定
5.自治体から指導、命令を受けても改善されない場合は行政代執行を行う

空き家の固定資産税に悩んだときの対処法3つ

空き家を放置し、管理不全空き家または特定空き家に指定されると、固定資産税が高くなるためしっかりと対処しなければなりません。ここでは対処方法を3つ紹介します。

1.売却する

空き家に費用をかけたくないと考える方は、売却するのがおすすめです。土地、建物ともに手放せば、固定資産税や都市計画税はもちろん、土地や建物の管理自体も不要になります。

個人で売却するには時間と労力がかかるので、不動産会社にお願いすればスムーズでしょう。特に、老朽化した空き家が建っているまま売却する場合は、個人間売買では時間がかかることが多いものです。

土地や建物の状態によるため、個人間売買の場合と不動産会社を利用する場合とを比較検討し、マストな方を選択しましょう。

相続した空き家を売却する場合の税金についてはこちらの記事を参考にしてください。

相続した不動産を売却するときにかかる税金はいくら?特別控除や注意点をチェック

2.更地にしてから売却する

更地にして売却する方法もあります。建物価値のない空き家を売却する場合や、立地によっては、更地にした方が売れやすくなる場合もあるのです。

前述した通り、更地にすると固定資産税は上がりますが、早く売れれば固定資産税の支払いからも早く逃れられます。

空き家が建っている状態で売る場合と更地のまま売る場合のメリット・デメリットは以下の通りです。参考にしてみてください。

・空き家が建っている状態で売る場合

メリット デメリット
・解体費用がかからない。
・固定資産税が安い。
・買主が住宅ローンを利用できる
・価格が相場より低い。
・売却まで時間がかかることが多い。

・更地で売る場合

メリット デメリット
・買手がつきやすく売買しやすい ・解体費用がかかる。

(自治体によっては解体費用を補助する制度あり)
・固定資産税が高い。

 

3.管理する

空き家を手放さず、きちんと管理するのも方法のひとつです。所有者として引き続き管理する場合、自分で管理する方法と親戚、知人、専門業者に依頼する方法があります。

自分で管理する
もし、空き家が近い場合は、自分で管理しても良いでしょう。管理費もかからないので、金銭的な負担は少なく済みます。

ただし、空き家が遠い場合は、交通費や所要時間も多くかかります。管理にかかる手間や費用、時間を把握し、自分で管理できるかどうか判断すると良いでしょう。

親戚や知人に管理を依頼する
短期間だけ人に任せたいなら、空き家の近くに住む親戚や知人に管理を依頼するのもひとつの手です。長期的に任せたいのであれば謝礼や報酬について細かく決めた方が良いでしょう。

また、管理の専門家ではないので、完全に任せることはできません。管理上のトラブルが起きたときは所有者の責任になることを承知の上で依頼する必要があります。

専門業者に依頼する
親戚や知人にお願いすると気を遣ってしまうという人は、専門業者に依頼するのがおすすめです。管理費用は高くなりますが、プロとしてしっかり管理してもらえます。

上記3つの場合の費用や手間を考え、比較検討して良い方法を選びましょう。

空き家の固定資産税を理解してしっかり対処しよう

固定資産税は、空き家でも課税対象です。通常住宅用地は「固定資産税等の住宅用地特例」が適用され、空き家も同様に減税対象となっています。

ただし、更地にしたり、特定空き家または管理不全空き家に指定されると、対象から外され固定資産税が6倍に跳ね上がります。

対処方法はいくつかありますが、売却すれば固定資産税の納税や空き家の管理をする必要がなくなります。今後の対応を比較検討するためにも、まずは不動産会社などの専門家に相談してみるのも良いでしょう。

監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一 弁護士

1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。

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