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事故物件の相場はどれくらい?売却価格の目安と高く売るためのポイント

2025.09.09

事故物件を相続したものの、「いくらで売れるのか」「通常よりどれくらい安くなるのか」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。実は事故の内容や物件の状態によって、売却価格は大きく変わります。

この記事では、事故物件の相場目安や価格に影響する要因、少しでも高く売るための具体的な方法についてわかりやすく解説します。

事故物件はなぜ安くなる?価格相場の目安と理由

事故物件は通常の物件と比べて、売却価格や家賃が大幅に下がる傾向があります。まずは、事故物件の定義から価格が下がる理由までを詳しく解説します。

事故物件とは心理的瑕疵のある物件のこと

事故物件とは、過去に自殺や孤独死、他殺などが起きたことで心理的瑕疵(しんりてきかし)があるとされる物件です。建物の構造や設備に問題がなくても、住む人に精神的な抵抗感を与える点が特徴。

2021年には国土交通省が告知義務に関するガイドラインを定め、事故の内容や時期に応じた扱いが明確化されました。

売却価格は市場価格より1〜5割安くなるのが基本

事故物件の売却価格は、通常の相場より1〜5割程度安くなるのが一般的です。孤独死や自殺、殺人などの内容に応じて心理的負担が異なるため、値下がり幅にも差が出ます。特に他殺など事件性が強い場合は、半額以下で売却されるケースもあります。

事故内容の重さに比例して価格が下がる傾向があり、市場価格での売却は現実的に難しいのが実情です。

家賃も20〜30%程度安くなるケースが多い

賃貸に出す場合も、事故物件は通常より家賃を20〜30%下げて募集することが一般的です。入居希望者の多くが心理的な不安を抱くため、価格での訴求が必要になります。特に事故から間もない時期は敬遠されやすく、空室が長期化するリスクもあります。

需要が低く売れにくいため値引きは避けられない

事故物件は敬遠される傾向が強く、通常の物件に比べて購入希望者が少ないため、どうしても値下げして売却する必要が出てきます。心理的なマイナスイメージに加え、周囲の口コミや事件報道などが影響しやすいからです。

購入希望者が現れても値下げ交渉に発展するケースが多く、相場に近い価格で売り出しても反響が得られず、最終的に数百万円単位で価格調整せざるを得ないことも珍しくありません。

物件の価格相場に影響する要素

事故物件の価格相場は一律ではなく、事故の内容によって大きく異なります。ここでは、価格に影響する主な要素をケース別に紹介します。

孤独死・自然死などのケース(1〜2割)

孤独死や自然死の場合は、心理的瑕疵の中でも比較的軽度と見なされることが多く、価格への影響は相場の1〜2割程度に留まるのが一般的です。

特に、発見が早く汚損が少ない場合や高齢者の自然死などでは、買主の心理的な抵抗も小さくなります。このようなケースでは、リフォームや特殊清掃を行えば、通常の流通市場でも売却しやすくなるでしょう。ただし、死後の発見が遅れていた場合はこの限りではありません。

自殺があったケース(1〜3割)

自殺があった物件は、孤独死などよりも心理的な抵抗感が強く、売却価格は市場価格より1〜3割ほど安くなるのが一般的です。事故内容によって影響度は異なり、物件の損傷が少ないリストカットや飛び降りなどでは、下落幅が比較的軽度な傾向も見られます。

一方で、血痕や腐敗が残るようなケースでは、3割以上の値引きになることも。いずれにせよ、通常の買い手には敬遠されやすく、価格の下落は避けられません。

殺人など重度のケース(3〜5割以上)

殺人事件などの重度なケースは、事故物件の中でも最も価格が下がる傾向にあり、売却価格は市場相場の3〜5割は下がることが一般的です。とくに、ニュースで報道された物件や、事件性が強いものは敬遠されやすく、半額以下になるケースもあります。

心理的な抵抗感が非常に強いため、仲介や買取を断られることも。こうした場合には、事故物件の取り扱いに慣れた専門業者に相談することで、再販や活用の道が開ける可能性があります。

事故物件を売却する前に知っておきたい注意点

事故物件を売却する際には、通常の不動産と異なるルールやリスクが伴います。トラブルを未然に防ぐためにも、売却前に押さえておきたいポイントを解説します。

事故物件を隠して売ってはいけない

事故物件であることを隠して売却するのは、重大な告知義務違反に該当します。たとえ建物の外観や設備に問題がなくても、心理的瑕疵は買主の意思決定に大きく影響するため、事前の告知は不可欠です。

万が一、契約後に事故の事実が判明した場合、買主から「契約不適合責任」を問われ、損害賠償請求や契約解除に発展する恐れがあります。公平で適正な取引を行うためにも、事故物件であることは必ず契約前に明確に伝える必要があります。

売買は告知義務に時効がない

「事故物件の告知義務はいつまで続くのか?」と疑問に思う方もいるかもしれませんが、売買契約においては、事故発生から何年経っても告知義務が消えることはありません。仮に建物を取り壊して新たに建て直したとしても、「過去に事故があった土地」としての告知義務は残ります。

実際に、50年以上前に発生した殺人事件でも、買主への説明がなかったために告知義務違反が認められた判例も存在します。事故物件を売却する際には、「義務がいつまで続くか」ではなく、「常に買主へ伝えるべきもの」として認識しておくことが重要です。

事故物件がマンションの場合は専有・共有部分で扱いが違う

マンションが事故物件となった場合、その事故が専有部分で起きたのか、それとも共有部分で発生したのかによって、告知義務の有無が異なります。

専有部分(部屋の中)で事故が起きた場合には、告知が必要です。一方で、エントランスや廊下といった共有部分で死亡事故が発生しても、基本的には買主に対する告知義務はありません。ただし、事故があった部屋の隣室などでは、事件の内容や社会的影響の大きさによっては告知義務が発生することがあります。

マンションの事故物件を売却する際は、扱いが複雑になる傾向があるため、経験豊富な不動産会社や専門家に相談しておくことが重要です。

事故物件を高く売るためのポイント

事故物件であっても、工夫次第で売却価格を下げずに済む可能性があります。ここでは、事故物件をできるだけ高く売るために押さえておきたい3つのポイントを解説します。

特殊清掃やリフォームで心理的な抵抗を軽減する

事故物件を少しでも高く売るには、特殊清掃やリフォームによって心理的な抵抗を軽減することが重要です。血痕や体液、死臭の除去はもちろん、部屋全体の印象を改善することで、買主が抱く不安を和らげる効果が期待できます。

さらに壁紙や床の張り替えなどのリフォームも行えば、物件の資産価値自体を高められ、価格の大幅な値下げを避けることも可能に。場合によっては、お祓いを依頼することで精神的な配慮を示し、購入のハードルを下げられる場合もあります。

費用対効果を見極めながら、プロの業者や不動産会社と相談の上、実施範囲を決めるのがおすすめです。

事故から時間をおいて売却するのも一つの戦略

事故から一定期間をおいて売却することも、事故物件を高く売るための効果的な戦略です。人の記憶は時間とともに風化していくため、事故直後よりも、数ヵ月〜数年後のほうが心理的な抵抗が薄れ、値下げ幅を抑えられる可能性があります。

特に自然死や孤独死など、日常的な死因であれば半年〜1年程度で市場の評価が落ち着くケースも見られます。一方で、報道などで広く知られた殺人事件などは風評被害が残りやすく、年数を経ても価格への影響が残ることもあります。

どの程度の時間を空けるべきかは、事件の内容や物件の立地などにもよるため、不動産会社と相談しながら慎重に判断することが重要です。

建物を解体する前に専門業者へ相談する

事故物件を売却する際に「建物を解体して更地にすれば高く売れるのでは」と考える人もいますが、独断での解体はリスクが高くおすすめできません。

建物を取り壊しても、人が亡くなった事実は消えず、土地にも告知義務が残るためです。心理的瑕疵が完全に払拭されるわけではないため、更地にしても買い手の抵抗感は残りがち。解体費用についても100万円以上かかる場合があり、売却が思うように進まなければ赤字になる恐れもあります。

また、更地にすると住宅用地の固定資産税の軽減措置が使えず、税負担も増加します。事故物件を高く、かつ安全に売却するには、解体の前に専門業者へ相談し、費用対効果を慎重に見極めることが重要です。

事故物件の売却に強い専門業者を選ぶ方法

事故物件をなるべく高く売却したい場合は、まず仲介に強い不動産会社を検討するのが基本です。立地や築年数などの条件が合えば、一般市場での売却によって、買取よりも高値がつく可能性があります。

ただし、事故物件には告知義務があるため、買い手が見つかるまでに時間がかかり、売却活動が長期化するリスクもあります。このような背景から、売却経験が豊富で、事故物件の扱いに慣れている仲介業者を選ぶことが重要です。

一方、早期の売却を希望する場合や、手間をかけたくない場合には、事故物件を専門とする買取業者を選ぶのも選択肢の一つ。希望に合わせて最適な売却方法を選びましょう。

事故物件の相場を正しく理解して、納得のいく売却を目指そう

事故物件は心理的瑕疵の有無や事故の内容によって相場が大きく変動します。売却を成功させるには、相場を正しく理解し、適切な対策や専門業者のサポートを活用することが大切です。

無理に隠さず、誠実な対応を心がけることで、納得のいく売却につながります。

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監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一 弁護士

1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。

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