
遺品整理は心身ともに負担の大きい作業です。なかにはうつやストレスなど心の負担につながることも。そのようななか、悪質な業者による高額請求や遺品の無断処分などのトラブルが増加しています。大切な思い出を守るためにも、信頼できる業者選びが欠かせません。
この記事では、実際の事例や悪質業者の特徴、業者選びのポイントを解説します。
目次
遺品整理トラブルが増えている背景とは

近年、遺品整理をめぐるトラブルが全国的に増加しています。その背景には、業者への依頼件数の増加が挙げられます。高齢化の進行や単身世帯の増加により、家族だけで遺品を片付けることが困難になりつつあり、専門業者に依頼する家庭は年々増加。
業者に任せれば、遺族の時間的・体力的な負担を軽減でき、精神的にも助かる面が多いため、外部サービスの活用は今や一般的な選択肢といえるでしょう。しかし依頼の増加に伴い、経験の浅い事業者や無許可で営業する業者の参入も相次ぎ、業界全体のサービス品質にはばらつきが見られるようになりました。
こうした状況が、遺品整理に関するトラブルを生む要因になっているのです。
実際に起きた遺品整理トラブルの事例

遺品整理の現場では、想像以上に多くのトラブルが発生しています。ここでは特に報告の多いケースを紹介します。
高額請求・追加料金の発生
「見積もり時には10万円程度と言われたのに、遺品整理後に物量が多かったなどの理由で30万円を請求された」といった費用トラブルが多い傾向にあります。
書面を交わさずに契約した場合や、見積もりに含まれる作業範囲が不明瞭な場合に起きやすくなります。最初から低価格を提示し、あとで上乗せする悪質な手口もあるため注意が必要です。
遺品の無断処分・貴重品の紛失
「これは捨てないで」と伝えた形見や現金・貴金属が、作業後に見当たらなくなるケースがあります。
遺族の希望があるにもかかわらず、無断で遺品を処分したり、紛失したりするトラブルは少なからずあります。なかには「見つからなかった」としてネコババされていた事例も。
業者との認識にズレがあると、大切な品が不用品として扱われることもあるため、仕分けや確認を業者任せにせず、可能な限り立ち会って進めることが重要です。
無料回収業者によるトラブル
「無料回収」をうたう業者の中には、実際には高額な料金を後から請求する悪質なケースがあります。例えば、荷物をトラックに積み込んだ後に「運搬費は別」と主張される場合や、「役所に申請すれば返金される」など虚偽の説明を受けた事例もあります。
無許可で営業する業者も多く、回収品を不法投棄されて依頼者が責任を問われるリスクも。無料という言葉に安易に飛びつかず、事前に費用の内訳や許可の有無を必ず確認しましょう。
悪質な遺品整理業者に共通する特徴

トラブルに巻き込まれないためには、悪質業者の特徴を知っておくことが重要です。依頼前のチェックポイントとして覚えておきましょう。
極端に安すぎる見積もりを提示する
他社より圧倒的に安い料金を提示する業者には注意が必要です。安さで気を引いて契約後に「作業が想定より多かった」「追加費用がかかった」といった理由でもめるケースがあります。
見積もり段階で詳細な内訳がなく一律料金をうたっている業者の場合、トラブルが起こるリスクが高い傾向に。費用を抑えたい場合でも、相場とあまりにもかけ離れた金額には慎重な検討が必要です。
クーリング・オフを無視した高額なキャンセル料の請求
解約を申し出た際に、事前説明のない高額なキャンセル料を請求されるトラブルもあります。遺品整理サービスは訪問販売に該当するため、契約書面を受け取ってから8日以内であればクーリング・オフが可能です。
原則として違約金は不要ですが、制度を知らない消費者に対し「キャンセルには◯円かかる」と不当に請求する業者も存在します。制度を理解せずに契約すると、不利な条件でも飲まざるを得ない状況に陥ってしまうかもしれません。
必要な許可や資格を持っていない
遺品整理には、法的に必要な許可が複数あります。不用品を回収するには「一般廃棄物収集運搬業許可」が必要であり、買取を行う場合は「古物商許可」が必要です。許可を持たずに営業している業者は、違法な不法投棄やトラブルの原因になることも考えられます。
業者に依頼する前に許可の有無を確認しましょう。許可の有無は、業者のホームページや市区町村の公式webサイトにのっている名簿で確認できます。不明な場合は遺品整理業者に直接問い合わせてみてください。資格や許可の提示を渋る業者であれば、依頼は見送ったほうが賢明です。
事業者情報や実績が不透明
ホームページがあっても、料金例や作業実績が全く記載されていない業者は注意が必要です。優良な遺品整理業者は、所在地・連絡先・許可番号・過去の作業事例などを積極的に公開し、信頼性を担保しています。
一方、実態の見えない業者は、トラブル発生時に連絡が取れなくなる可能性もあります。口コミやSNSなどの評価も併せてチェックし、信頼できる情報があるかどうかを確認することが重要です。
信頼できる遺品整理業者を選ぶための5つのポイント

安心して任せられる優良業者を選ぶには、いくつかの基準を持って比較することが大切です。信頼性の高い業者を判断するための6つの視点を紹介します。
1.複数社から相見積もりをとって比較する
1社だけの見積もりで即決するのは避けてください。複数の業者に見積もりを依頼し、料金体系や対応の丁寧さ、説明のわかりやすさなどを比較することで、適正価格の目安がつかめてきます。
相見積もりを嫌がる業者や、他社との比較を避けたがるような態度が見られた場合は注意してください。3社程度から見積もりを取り、納得できる対応をしてくれる業者を選ぶようにしましょう。
2.見積書と契約内容が明確であるかをチェックする
後から高額請求をされないためにも、契約前に見積書の内容をしっかり確認することが大事です。「一式◯万円」など曖昧な表現ではなく、作業項目ごとに具体的な金額が記載されているかをチェックするのが基本です。
また、キャンセル時の対応や追加料金が発生する条件についても書面で提示してもらい、納得してから契約を結びましょう。
3.遺品の扱いに対する考え方を確認する
故人の思い出が詰まった遺品をどう扱うか、その姿勢には業者ごとの違いが表れます。
信頼できる業者は、単なるゴミとしてではなく、一つひとつの品に敬意を払いながら丁寧に対応してくれるはずです。スタッフの言葉遣いや所作、供養や分別に対する姿勢から、誠実さが垣間見えるでしょう。
見積もりの場で「写真や手紙などはどう扱われますか?」と質問してみるのもおすすめです。
4.遺品整理士など専門資格を持つスタッフが在籍している
「遺品整理士」は、遺品整理に関する基礎知識や倫理観を修得した民間の資格です。この資格があるからといってすべての業者が優良とは限りませんが、一定の専門性やモラルを持っているかどうかの判断材料にはなります。
遺品整理業には法的な業資格が存在しないため、業者選びの判断材料として資格保有の有無を確認しておくと良いでしょう。
5.口コミや紹介実績も参考にする
実際にサービスを利用した人の声は、業者選びの重要な判断材料です。業者のホームページに掲載されている「お客様の声」などをチェックし、評価に注目してみてください。
「丁寧だった」「料金が明確だった」といったコメントが多い業者は安心感があります。写真付きのレビューや地域密着型の紹介実績がある業者は、信頼性も高いでしょう。
遺品整理業者とのトラブルが発生した時の対応

遺品整理で業者とトラブルが起きた場合は、まず契約書や見積書などの書面を確認し、事実を整理したうえで冷静に話し合うことが基本です。それでも解決しない場合は、消費者ホットライン(188)や国民センターへの相談を検討しましょう。
契約から8日以内であれば、クーリング・オフ制度を利用できる可能性があります。悪質な対応や身の危険を感じるケースでは、警察や弁護士に相談することも視野に入れてください。泣き寝入りせず、専門機関を頼ることが大切です。
トラブルなく安心して遺品整理を任せるために準備を整えよう

遺品整理をスムーズに進めるには、事前の準備と家族間の情報共有が欠かせません。業者とのトラブルを防ぐには、信頼できる業者選びと明確な意思表示が重要です。
大切な遺品を丁寧に扱ってもらうためにも、立ち会いや希望の伝達など、家族ができることを整理しておきましょう。
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1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。
