ニュースで見聞きする機会の多い、空き家問題。空き家を所有している場合、放置していると金銭面や安全面などのリスクが生じます。
とはいえ、具体的にどうすれば良いか分からない人も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、空き家問題の現状と放置のリスク、対策方法を紹介します。
空き家問題とは?数値で見る現状
空き家とは、年間を通して人が住んでいない、または使われていない家のこと。近年、空き家が社会問題になっています。全国に空き家はどのくらいあるのか、なぜ問題なのか、現状を見ていきましょう。
空き家の現状
近年、空き家が急増中です。2018年に総務省が行った「住宅・土地統計調査(※)」では、全国で約848万9千戸が空き家であることが判明しています。前回調査の2013年と比べると29万3千戸も増えていて、約13軒に1軒以上が空き家というのは過去最高です。
空き家は今後も増えることが予想されているため、早急な対策が求められています。
空き家の定義
一口に空き家といってもさまざまなケースがあるため、総務省は次の4種類に分類しています。
種類 | 定義 |
---|---|
売却用の住宅 | ・人は住んでいないが、売却予定がある住宅 ・新築、中古は問わない |
賃貸用の住宅 | ・借り手がいないため空き家になっている賃貸住宅 ・新築、中古は問わない |
二次的住宅 | ・別荘や作業部屋など、人がいないことが多い住宅 |
その他の住宅 | ・上記3つ以外の理由で人が住んでいない住宅 ・例:入院や老人ホームへの入居、取り壊し予定など |
このうち、空き家問題として取り上げられているのは、放置される可能性が高い「その他の住宅」です。
前述の総務省の調べによると、空き家全体の約41%を「その他の住宅」が占めています。1998年から2018年の20年間で、182万戸から約1.9倍の347万戸に増加していて、空き家問題の難しさを表しています。
空き家の増加に伴う問題点
空き家は人の気配がなく、手入れが行き届かないため、以下のような問題を引き起こすことがあります。
<一例>
・風景、景観の悪化
・防犯上の問題の発生
・ゴミの不法投棄
・衛生面の悪化
・防災上の問題の発生(倒壊、崩壊、屋根・外壁の落下など)
空き家が増えている4つの原因
空き家が増えている原因は多岐にわたります。代表的なものを見ていきましょう。
1. 少子高齢化の加速
日本は少子高齢化が加速していて、死亡数が出生数を上回っています。人口が減少することで、既存の住宅数と総世帯数の差が広がり、空き家が増えているのです。
また、高齢になった住人が老人ホームに入ったり、子ども世帯と同居したりすることで住宅が放置され、空き家が発生するケースもあります。
2. 相続後の放置
空き家が発生するのは、親との死別による相続の発生や、親が高齢となって老人ホームへ入居するタイミングがそのきっかけの一つとなっています。
家族や親族がその住宅に住めば問題ありませんが、自宅がある、自宅から遠い、解体費用をかけたくない、といった理由で放置してしまい、空き家になるケースが多く見受けられます。
3. 固定資産税・都市計画税への対策
土地や住宅は所有しているだけで、固定資産税や都市計画税が生じます。しかし、土地に建物が建っていると特例措置を受けられ、税金が減額されます。住宅用地ごとの特例率は次の通りです。
住宅用地の区分 | 固定資産税の特例率 | 都市計画税の特例率 |
---|---|---|
小規模住宅用地 (200平方メートル以下の部分) |
6分の1 | 3分の1 |
一般住宅用地 (200平方メートルを超える部分) |
3分の1 | 3分の2 |
建物を取り壊して更地にすると特例の対象外になります。節税のため、空き家をそのままにしている人も少なくありません。
4. 新築住宅の人気
2019年に国土交通省が発表した「既存住宅流通市場の活性化(※)」を見てみると、新築住宅の着工戸数が約98万戸なのに対し、中古住宅の取引戸数は約17万戸と、5倍以上の開きがあります。
住宅全体に占める中古住宅の比率は、わずか14.7%です。中古住宅が売れず、新築住宅が建つことで、空き家が増えてしまいます。
空き家が原因のトラブル5つ
空き家の放置は安全面や衛生面など、さまざまなトラブルを招きます。よくあるトラブル例を見ていきましょう。
1. 家の倒壊
家は空気の入れ替えや手入れをしないと老朽化が進みます。地震や強風などによって倒壊するリスクが高まり、最悪の場合は近隣住宅に被害を与えてしまう恐れがあります。
2. 火災の発生
空き家は人の出入りがないので、放火のターゲットにされやすい傾向にあります。敷地内の雑草や不法投棄によるゴミに火をつけられると、大規模な火災につながることも。また、コンセントの漏電による火災発生のリスクもあります。
3. 景観・衛生面の悪化
雑草が伸び放題、不法投棄によるゴミの散乱、老朽化が進んだ家屋と、まるで廃墟のような空き家があると、周辺の景観が悪化します。
また、ゴミから悪臭がただよったり、ネズミやハクビシンといった動物が住みつき、衛生面を悪化させたりすることも。あまりに状況がひどいと周囲の住宅の不動産価値が下がり、周辺住民とのトラブルに発生する恐れがあります。
4. 犯罪の誘発
空き家は犯罪の温床になりやすく、次のような犯罪行為が行われることもあります。
<一例>
・放火
・不法侵入
・不法占拠
・盗難
・薬物の栽培
空き家が犯罪者の拠点になってしまうと、周辺の治安悪化につながります。
5. 特定空き家への指定
以下のような状態の空き家は、自治体から「特定空き家」に指定されることがあります。
特定空家等
(1)倒壊など著しく保安上危険となるおそれがある状態
(2)アスベストの飛散やごみによる異臭の発生など、著しく衛生上有害となるおそれがある状態
(3)適切な管理がされていないことで著しく景観を損なっている状態
(4)その他、立木の枝の越境や棲みついた動物のふん尿などの影響によって、周辺の生活環境を乱している状態
特定空き家に指定されると、固定資産税と都市計画税の特例措置から除外され、税額が高くなります。改善されない場合は50万円以下の過料の発生や、行政代執行による取り壊しが行われる場合も。
特定空き家に認定されると、まず自治体から管理に関する助言や指導が行われるので、その段階で何らかの対策を講じましょう。
空き家問題を解決する3つの方法
空き家を放置している場合、そのままにしても良いことはありません。3つの解決策を紹介するので、何が良いか考えてみましょう。
1. 空き家バンクを利用する
空き家バンクとは、空き家情報をHP上に掲載し、所有者と利用者をマッチングさせるサービスのこと。主な運営者は自治体で、全国的に展開されています。
HPを見た利用者からの申し込み後、条件面で同意したら不動産の売買や賃貸契約を結びます。売却したくても値段がつかない空き家を、無償で譲るのも一案です。
2. 空き家を賃貸住宅にする
空き家を売却せず保有したいけれど劣化は避けたい、ビジネスに活用したい場合は、賃貸住宅にする方法があります。使用することで建物の劣化を防げるだけでなく、入居者が見つかれば家賃収入を得られるのがメリットです。
ただし、以下のような注意点もありますので、よく考えた上で決断しましょう。
<注意点>
・自分で賃貸経営をするのは難しい
・賃貸経営を不動産会社に任せると手数料がかかる
・修繕やリフォームが必要だと初期費用がかかる
・入居者が見つからないと家賃収入がない
3. 更地にしてから活用する
空き家を解体して更地にすると、売却や借地など活用方法が広がります。ただし、その土地の人気が高くないと需要が少ないので注意が必要です。解体費用の発生や税金の増額など、デメリットが上回ってしまうケースがあります。
解体費用の相場は次の通りです。正確な費用は建物によって変わるので、気になる場合は解体業者に見積もりを依頼してみましょう。
建物の構造 | 費用相場 |
---|---|
木造 | 3~5万円/坪 |
鉄骨造 | 5~7万円/坪 |
RC(鉄筋コンクリート)造 | 6~8万円/坪 |
空き家問題の解決方法を考えてみよう
日本では約13軒に1軒が空き家です。空き家の増加は治安や安全面、衛生面に大きく関わるため、これ以上増やさないことが求められます。空き家を所有している人は、「今後どうするのか」「今できることは何か」考えてみてはいかがでしょうか。
立地や建物の状態などによっては思わぬ値段がつくこともあります。売却を考えている場合は、不動産会社に相談してみるのもおすすめです。
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1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。